§1.磁性体を含む系の磁場の表式

2)磁気双極子

微小環電流によるベクトルポテンシャル

Fig.2に示した様な、小さい環を考え、環には一定電流iが流れているとする。環はxy平面上にあるとする。環上の位置r'(x', y', 0)にある微小ベクトル要素をds'とすると点P0(x, y, z)のベクトルポテンシャルは

A= μ04πrdV' =μ04πds'r 式(1-7)

ここで

r=x-x', y-y',  z ,  r=x-x'2+y-y'2+z2 式(1-8)

また

R=x,  y,  z       ,                    R=x2+y2+z2 式(1-9)

である。環の大きさは点P0迄の距離に比べて十分に小さいと仮定し、Rx', Ry'

と考え r を 1/R で展開し、x', y'に関して1次の項までで近似する。式(1-8)は

R=x2+y2+z21-2xx'- x'22x2+y2+z2-2yy'- y'22x2+y2+z212

=R1-2xx'- x'22/R2-2yy'- y'22/R2 R1-xx'/R2-yy'/R2 式(1-10)

従って 1/r は

1r=1R1-xx'/R2-yy'/R2  1R1+1R2xx'+yy' 式(1-11)

A=μ04πds'r μ04π1R1+1R2xx'+yy'ds' 式(1-12)

経路積分

ここで経路積分の1項目はゼロになり、2項目の積分は

A= μ04π1R3xx'+yy'ds'=μ04π1R3xx' ds+yy' ds 式(1-13)

式(1-13)の第一項目の経路積分は

x' ds=x' ds'xex +x' ds'yey 

となるが、一項目は経路積分の往きと帰りで同じx'の値に対しds'xの符号が逆になるので積分はゼロとなる。(Fig.3参照)二項目は、環で囲まれた面積Sとなる事がFig.3より 解る。次に、式(1-13)の第二項目の経路積分は

y' ds=y' ds'xex +y' ds'yey 

となるが、一項目は -S となる事が、Fig.3より解る。また二項目は経路積分の往きと帰りで同じy'の値に対しds'yの符号が逆になるので積分はゼロとなる。従って式(1-13)は

A=μ04π1R3xx' ds'+yy' ds'=μ04π1R3x S ey-y S ex

=μ04πSR3x ey-y ex=μ04πSR3x ez×ex-y ey×ez

=μ04πSR3 ez ×x ex+y ey 式(1-14)

ここでベクトル積ey×ez=-ez×eyとなる事を用いている。更にez×ez=0であるので、式(1-14)の右辺にz ez×ezを加えても変わらないので

A=μ04πSR3 ez ×x ex+y ey+z ez=μ04πSR3 ez×R 式(1-15)

ここに、以下の量を定義し、磁気双極子モーメントと呼ぶ。

m=i S ez=i S 式(1-16)

ここでSは環の面の法線方向を向き、面積Sを持つベクトルである。式(1-15)は、磁気双極子モーメントmを用いて

A=μ04π1R3 m×R 式(1-17)

このように原点から距離Rの点の磁気双極子モーメントによるベクトルポテンシャルを求める事ができた。環電流はXY平面にあると仮定したが、式(1-17)は、mRの外積の形に一般化されており、一般の場合にも成り立つ。磁場は式(1-17)の回転より求められる。以下のベクトル演算の一般公式を用いる。

 ×F×G=F   G- G   F +G  F- F  G 式(1-18)

mは一定なのでm=0 ,  RR3m=0であるから、式(1-17)の回転は

B=  ×A=μ04π × m×RR3=μ04πm RR3-m RR3

=μ04πm xxx2+y2+z23+yyx2+y2+z23+zzx2+y2+z23

-μ04π mxxxx2+y2+z23+myyxx2+y2+z23+mzzxx2+y2+z23ex

+mxxyx2+y2+z23+myyyx2+y2+z23+mzzyx2+y2+z23ey

+mxxzx2+y2+z23+myyzx2+y2+z23+mzzzx2+y2+z23ez 式(1-19)

ここで一項目の{ }内は

xxx2+y2+z23+yyx2+y2+z23+zzx2+y2+z23=3x2+y2+z23-3x2+y2+z2x2+y2+z25

=3x2+y2+z23-3x2+y2+z23=0 式(1-20)

となり、ゼロとなる。二項目の{ }内で一つ目の( )内(x成分)を考えると

mxxxx2+y2+z23+myyxx2+y2+z23+mzzxx2+y2+z23

=mx1x2+y2+z2 3-3x2x2+y2+z25  -my3xyx2+y2+z25-mz3xzx2+y2+z25

=mxx2+y2+z2 3-3x(mx x+my y+mz z)x2+y2+z25=mxR3-3x mRR5 式(1-21)

よって式(1-19)は

B=μ04π-mR3+3R mRR5 式(1-22)

ここで、

xmRR3=xmx x+my y+mz zx2+y2+z2 3=mx x2+y2+z2 3-3x(mx x+my y+mz z)x2+y2+z25 式(1-23)

と書けるので、式(1-22)は

B=-μ0 mR4πR3 式(1-24)

と表す事ができる。

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公開日:2011年1月15日     更新日:2023年10月16日
作成者:児島 伸生
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